シャヴァーサナのブログ

初めまして、東京在住の人人と申します。

台湾の室内楽アンサンブルCicada

台湾にはCicadaという室内楽アンサンブルがあります。

先週に、日本のあるカフェチェーン店で作業している時に、偶然にCicadaの音楽を聞きまして、一瞬でわかってびっくりしました。

異郷でもCicadaの音楽を聞けるなんて...とすごく感動して、Cicadaを紹介しようと決めました。

 

本記事は、

「ポストロックジャンルの音楽に興味持っていて、聞いてみたい!」

「11月19日にPiano Eraでの演奏会を参加するが、Cicadaとか聞いた事ない。」

「作業中のBGMを探しているが、もう少し独特な音楽が知りたい!」

「Cicadaについて、もっと深くまで知りたい!」

 

という方に対して、もうすぐ十年のファンになる私が、過去のインタビューや現場のライブから情報を収集して、自分の感想を加味した内容などをまとめました。

 

今までCicadaに関する情報について、中国語や日本語の情報はまだ少ない状態なので、本記事を通して、Cicadaのことをみんなに知ってもらいたいので、Cicadaの魅力についてご紹介します。

 

 

Cicadaについて

Cicadaは2009年に成立した台湾国内でも稀にある室内楽アンサンブルです。 

リーダーは最初から変わらずにピアニストを兼ねた江致潔です。

Cicadaという名前

Cicadaは日本語でセミという意味です。

なぜセミという名前をつけたのかですが、公式のFacebookによれば、

人がセミの存在に気づくのは、セミの姿を見るからではなく、セミの声を聞くからだ

という由来があるそうです。

 

過去のインタビューでは、

セミは強い存在感を見せることはありませんが、セミとしての存在感を持っていて、このことはCicadaの伝えたい創作理念と合っている」

と述べられていました。

セミのよう存在感でみんなの生活と付き合う音楽ということなんですね。

楽器構成

メンバーの変動によって楽器が変わりますが、基本的にピアノ、バイオリン、チェロ、アコースティックギターという構成となっています。

メンバー

2022年10月時点のメンバーは許罡愷(バイオリン)、楊庭禎(チェロ)、蔡巽洋(アコースティックギター)、江致潔 (ピアノ)です。

音楽の特徴

Cicadaの音楽は、激しい悲しみや怒りよりも繊細さや思い出、感傷といった雰囲気を感じさせます。編曲上、調和が難しいピアノとアコースティックギターをうまく組み合わせられているのも特徴だと言われています。

 

最初は一つの楽器(よく出てくるのはピアノ)から始まり、他の楽器の音が徐々に重なり、感情を重ねて物語を紡いでいくような形式の曲が多いです。

 

また、Cicadaの音楽はNew Classic、Post Rockなど、色々なジャンルに分類され、単純に区別できないと言われています。それは、クラシックやロックなど多様な音楽的背景をもったメンバーが参加して、ジャンルの枠にとらわれずに作曲をしているからだと思います。Cicadaにとってはジャンルよりも、場面やテーマの方が重要なことです。

 

作品変遷

初期作品は個人の感情を作曲テーマとなっていましたが、2013年から創作のコンセプトを台湾の土地、海洋、山、動物に移しました。

個人の感情を表現した初期アルバム

初期のアルバムが『Over the Sea / Under the Water』、『Pieces』、『Let’s Go』と個人の感情に焦点を当てた作品です。

 

『Over the Sea / Under the Water』の作品では、最初に明快なメロディーと飛躍感で明るい雰囲気を感じますが、曲が進むに連れてだんだん深く複雑な感情を帯びてくるイメージです。

 

また、『Pieces』の作品では、都会に縛られてどこかで脱出したいというような暗く寂しい気持ちに勇気をくれます。

2013年にコンセプトの転換

バンドのリーダーである江致潔はこのように語っています。

「2013年付近、台湾で企業や政府が強引に開発を進めようとした結果起きた土地の紛争がありました。一連の事件に対して、私の周りの人は社会運動に参加しましたが、私は長い期間の観察がないと、その是非を話すのは非常に難しいと考えています。

 

なので、もし自分が音楽を通して、元々土地に関心を持っていない人に影響を与えて、別の角度で土地への関心を引き起こせないかと思いました。

 

そこで、もし自分自身がここに生きている土地、生き物や植物であれば、どういう気持ちになるかを想像して、音楽を作ろうと考えたのがコンセプト転換の起点でした。」

環境を注目して今に至る作品

2013年からアルバムのコンセプトを転換し、環境に注目して壮大なシーンを描写しようとしていました。

 

『Coastland』、『Ocean』、『Light Shining Through the Sea』の3アルバムでは、擬人化の手法を使って、もしも自分が台湾の海岸になって、工業化が進むに連れて、いろんな変容が起きた時に、自分はどういう気持ちになるかと想像した作品です。

 

2015年にメンバーの変動を迎えて、『Farewell』では、初期の3アルバム中の14曲を再編曲して、原曲とまた一味違う作品となりました。

 

近年では、テーマが海から山へ転じています。海岸をテーマにした3アルバムでは、激しい感情を思わせるものでしたが、『White Forest』、『Hiking in the Mist』ではより落ち着く、山を尊ぶ気持ちが感じられ、曲の中に余白を多めにとる印象があります。

 

最新の『Seeking the Sources of Streams』では、クラウドファンディング中です。よりCicadaがどういう感じのバンドか興味がある人は、👇日本語のついているオフィシャルの記事がありますので、ぜひ読んでみてください。  

 

作品に対するこだわり

「どの環境をテーマにする時でも、必ず自らの体験が必要です。そうでないと自分の気持ちに真っ正面に向き合えていないので作曲する立場がないと感じています。」

と江致潔は述べていました。

 

Cicadaのインタビューを読むと、例えば、海洋をテーマとした時にダイビングしに行く、山をテーマとした時登山して行くということがわかりました。人と自然との関係性を実際に体験して、それらの感情を創作のアイディアとする決まりがあるようです。

 

Cicadaのもう一つのこだわりは、楽器ごとに録音し分けず全演奏者が一斉に録音することです。この形式によって、演奏中の交流で起きるささやかな変化や、音のない瞬間の空気感までも捉えることで、音楽の立体感がそのまま表現されています。最初は資金の問題でこの形にせざるを得ませんでしたが、結果的にこのやり方が一番Cicadaの伝えたい形と一致していたそうです。

 

こんな時に聞くのがオススメ

ボーカルがないので、単純に作業用BGMとしてはオススメです。ただ、深い考えごとがある時や、感情を解放するのにはもっとオススメです。私は落ち込む時に、よくCicadaの音楽を聴きながら、ジョギングをしていました。

 

Cicadaの曲を聴いてみよう!

コンセプト転換前の作品

個人の感情としたアルバム『Over the Sea / Under the Water』に
Over the Sea / Under the Waterという曲です。

コンセプト転換後の作品

山をコンセプトにしたアルバム『Hiking in the Mist』にSunlit Grasslandという曲です。

 

購入する場合

現時点では日本の販売は一部のアルバムしか売っていませんが、下記はAmazonで自分が見つけた購入できるアルバムです。日本では別のCicadaというバンドがあるので、間違わないように台湾Cicadaの方のリンクを貼ります。

MP3アルバム

Amazon Music Unlimitedで購入できるのは👇となります。

 

『Over the Sea / Under the Water』

 

『Hiking in the Mist』

CDアルバム

『Ocean』

『Farewell』

『Hiking in the Mist』

 

2022年11月19日に日本で演出する予定も!

資料調べているところ、たまたまにCicadaはPiano Eraで演出する予定という情報を見つけました。Cicadaのライブは普通なバンドのように頻繁ではないので、まさか日本で出会えるなんてと即購入しました。(笑)

 

最後に

私は2013年の時、Cicadaの音楽と出会いました。最初はこの曲で惚れました。

最初はコンセプトの話を知らずに、曲の中で重ねられていく感情の高揚感を感じて、涙がボロボロと落ちました。 後で調べてみたら、このアルバム『Coastland』は台湾の西海岸としたコンセプトでした。

 

このアルバムについてのインタビューで、以下のような話がされていました。

「工業化された台湾西海岸の豊かな生活は、一部の土地の犠牲で成り立っています。たくさん工場が建っているので、晴れた日でも汚い煙が充満した空となっている状態です。そんな絶望的な風景に黄色いサボテンの花が咲いていました。そのシーンがすごく衝撃的でした。」

 

このインタビューを見てから、なぜそれほど激しい気持ちが起きたのかがわかりました。自分が感じていた寂しさや疎外感に対して、絶望的な中でも励ましを与えてくれたからです。

 

人は土地の上で暮らし、その土地に色々なものを残して去っていきます。土地は人が残したどんな形跡も受け入れ消化し、それでも綺麗な花を咲かせてくれます。私はこのことに少しの悲しさを感じました。

 

「土地は人からどういう風に使われても、最終的に綺麗な風景となります。土地の寛容さは偉大です。」

と江致潔は語っています。